「最近色々考えてばかりで、心が動かなくなった気がする。」
「何を見ても心が疲れていて、感動したり楽しんだりする余裕がない。」
「毎日が同じことの繰り返しで、何をしても新鮮さやワクワクを感じなくなった。」
「…ああ、もっと何かを楽しみたい!」
あなたはこのように、感性が鈍くなったと感じたことはありませんか?
現代社会は急速に変化しており、その変化に適応するためのストレスや疲労が増えてきています。
また、他者との交流の機会が減少し、新たな視点や感情を学ぶ機会も失われています。
一方で、スマートフォンやネットへの依存が高まり、多くの場面で人々がスマートフォンとにらめっこしている姿が見られます。

このような生活が続くと感性が鈍ってしまい、日常生活がルーチン化してしまいます。
そして、「ふと気付けば一年が過ぎていた」という事も少なくありません。
実は、私も意識するまでは、そんな毎日の繰り返しでした。
しかし、日常の小さな変化に目を向けることで感性を取り戻し、子どもの頃のように変化に富んだ日常を経験することができます。
例えば、自宅や屋外で気軽に抹茶を楽しむことで、自分の心の微細な変化や季節の移ろいを感じ、豊かな感性を育むことができます。
この記事では、昔ながらと今どきの二通りの美味しい抹茶の作り方を通じて、豊かな感性の育み方をご紹介します。
あなたの人生をより豊かにする一助となれば幸いです。

美味しい抹茶の作り方(昔ながらの作り方)
「抹茶って何だか難しそう…」
そのように考える人は少なくないかもしれません。
ですが、茶道のような礼儀や作法など気にせず、純粋に美味しい抹茶を楽しむだけなら、何も難しいことはありません。
7つの簡単ステップで、一緒に美味しい抹茶を楽しんでみましょう。
1.道具を用意する
2.抹茶を選ぶ
3.お湯の準備
4.抹茶をふるう
5.お湯を注ぐ
6.抹茶を点てる
7.完成と味わい
美味しい抹茶を楽しむことが目的ですので、茶道の作法などにこだわらず、気軽に楽しんでみてください。
次に、各手順の具体的なポイントをご紹介していきます。

1.道具を用意する
美味しい抹茶を淹れるためには、まず必要な道具を揃えることが大切です。
初めは安価なものでも構いませんが、長期的に使用する場合は、ぜひ自分の一番のお気に入りを選びましょう。
お気に入りの道具を選ぶことで、その道具に対する愛着が生まれ、使用すること自体が楽しみになります。
道具を大切に扱うことで、抹茶を淹れる過程がより豊かな体験となるでしょう。
✅抹茶碗(茶碗)
抹茶を点てるための器。
専用の抹茶碗がない場合は、やや小さめの丼ぶりなどでも代用可能です。
陶器や木、プラスチック製などがありますが、日常使用では保温性や雰囲気のある陶器製、後述の野点(屋外で抹茶を楽しむこと)をする場合はプラスチック製が便利です。

画像引用:モンベル official
✅茶せん
昔ながらの抹茶を点てるための道具。
穂数が多いほどきめ細やかな泡が立ちます。
80本立てや100本立てが薄茶(一般的な抹茶)に適しています。
竹製が一般的ですが、プラスチック製だと手入れや取り扱いが楽なのでお勧めです。

画像引用:一保堂茶舖 official
✅茶しゃく
抹茶を計量するための器具。
茶しゃく一杯で概ね1gになるので、一服分(一人分の約2gのこと)だと2回すくいます。
小さじで代用することも可能で、小さじ1杯で一服分です。
一般的な竹製のものが静電気が発生しにくく、抹茶がくっつきにくいので使いやすいです。

画像引用:一保堂茶舖 official
✅茶こし
抹茶をふるうための器具。
ふるいにかけることでダマができにくくなり、抹茶をより滑らかに点てることができます。

画像引用:一保堂茶舖 official
✅鍋
お湯を沸かすための器具。
電気ケトルでも構いません。
外でお湯を沸かす場合は、小型の鍋とアウトドアバーナーが便利です。

画像引用:T-faL official
✅広口魔法瓶水筒
今どきのお手軽な方法で抹茶を淹れる場合はこちらを使用します。
広口の物を使用すると抹茶を入れるときや洗うときに使いやすいです。

画像引用:THERMOS official
✅湯温計
お湯の温度を測る際に使用します。
お湯の温度を正確に測ることで味の再現性を高めることができます。

画像引用:TANITA official
✅布巾
温めた器の水分を拭き取る際に使用します。
キッチンペーパーなどでも構いません。
2.抹茶を選ぶ
抹茶は品種や産地によって味が異なります。
主な品種と産地、そしてそれぞれの特徴を記します。
以下の説明などを参考に、お気に入りの抹茶を探求してみてください。
✅主な品種とその特徴
・やぶきた
最も一般的な品種で、国内生産量の約7割を占めます。
渋み・苦みと甘み・旨みのバランスが良く、クセがなく飲みやすいです。
・おくみどり
渋みや苦みが少なく、甘みや旨みが強いのが特徴です。
水色は深みのある美しい緑色です。
・さみどり
上品な旨みや香りが強く、さわやかな柑橘類を思わせる香りがあります。
・ごこう
まろやかな味わいで旨みが強いのが特徴です。
京都原産の希少品種です。
・うじひかり
濃厚な甘みと旨みの中に程良い苦みがあり、クセがありません。
水色は濃い緑色です。
✅主な産地とその特徴
・宇治(京都府)
日本で最も名高い抹茶の産地です。
程よい香りと旨み、渋みや甘みのバランスが取れた、さわやかな風味が特徴です。
・西尾(愛知県)
こちらも有名な抹茶の産地です。
濃厚なコクと甘み、旨みが感じられ、上品ながらも香りが強く、特に苦味と濃厚な味わいが人気です。
・朝比奈(静岡県)
玉露が有名ですが、品質の高い抹茶も多く生産しています。
甘みがあり、まろやかながらも苦味と渋みのバランスが良い濃厚な風味が特徴です。
・八女(福岡県)
濃厚な旨みとコクが最大の特徴です。
しっかりとした甘さと独特の上品な香り、濃い甘みのある味わいが特徴です。
渋みや苦味が少なく、まろやかで飲みやすいです。

3.お湯の準備
いよいよ抹茶を淹れる時間が近づいてきました。
お湯が沸くまでの時間は、美味しい抹茶が楽しめるというワクワク感が高まってくる瞬間です。
✅水の用意
軟水を使用します。
日本の水道水や国内のミネラルウォーターは主に軟水なので、抹茶を淹れるのに適しています。
水道水を使用する場合は家庭用浄水器などを通すと、抹茶の風味を最大限に引き出すことができます。
✅湯の沸かし方
必ず一度沸騰させます。
水道水を使用する場合は、沸騰させてカルキ臭を軽減させましょう。
✅器を温める
沸騰したお湯を入れて器を温めます。
これにより、抹茶が冷めにくく、香りや風味が引き立ち、均一に溶けやすくなります。
・器の温め方(兼湯冷まし)
熱湯を器に注ぎます。
器に注いだ熱湯は約10度下がるので、これを火を止めた鍋に戻すと約90度になります。
このお湯を使うと、抹茶を淹れる時に適温の約80度になります。
・器を乾燥させる
水分をしっかり拭き取ります。
水分が残るとダマになる可能性があります。
✅道具の保護
竹製の茶せんはお湯で温めるとしなやかになり、折れにくくなります。
乾燥した状態で使うと先端が傷む恐れがあります。
※プラスチック製の茶せんはこの工程は不要です。

4.抹茶をふるう
抹茶は静電気でダマができやすいため、使用前にふるいましょう。
抹茶をふるう際のやり方と注意点は以下の通りです。
✅ふるい方
茶こしを使用して抹茶をふるいます。
一服分(約2g)を茶こしに入れ、茶しゃくか小さじで直接器にふるい落とします。
ふるうことでダマをなくし、点てやすく滑らかな抹茶を作ります。
✅注意点
ふるいから抹茶を押し出さないようにします。
押し出すと網目の大きさのダマができる可能性があります。
ふるった後の抹茶は再度ふる必要はありません。
湿気を吸いやすいので、使用直前にふるうのが理想的です。

5.お湯を注ぐ
お湯を抹茶の入った器に注ぐ重要な瞬間です。
少し背筋を正すと、何となく茶道をしているような気分になります。
✅温度調整
適温は約70〜80°C。季節によって調整すると良いです。
・冬季:約75〜85°C
・夏季:約70〜80°C
湯温計で正確に測ると、安定した美味しさになります。
✅お湯の量
一服分(一人分の約2g)の抹茶に対して約70mlのお湯を使用します。
小さいヤクルトよりも少し多い量が目安です。
✅注意点
お湯が熱すぎると渋味や苦味が強くなります。
温度が低すぎると香りが引き立たず、泡立ちも悪くなります。
薄すぎる抹茶は苦味や雑味が増し、甘味が消えてしまいます。

6.抹茶を点てる
抹茶を点てます。
この時は頭を空っぽにして、何も考えずに点てることで思考がリセットされ、リラックスすることができます。
✅初めの混ぜ方
利き手と逆の手で茶碗を支えます。
茶せんで底の抹茶を分散させるようにゆっくり混ぜます。
表面に浮いた粉がなくなるまで、全体を軽く混ぜます。
✅本格的な点て方
茶せんを底から少し上げ、お湯が回らないようにします。
手首を前後に素早く動かし、スナップを利かせて泡立てます。
小刻みに動かし始め、次第に大きく動かします。
✅泡の調整
きめの細かい泡ができるまで点て続けます。
大きな泡は茶せんの先でつぶします。
泡が立ったら、茶せんの先を泡の表面まで上げ、ゆっくり動かして泡を細かくします。
✅仕上げ
中央に泡が盛り上がるように、静かに茶せんを上げます。
表面を整えると、きれいに見えます。
✅注意点
泡が細かいほど口当たりがなめらかでおいしく仕上がります。
茶せんは円を描くのではなく、アルファベットのMを描くように前後に素早く動かします。
お湯が回ると細かい泡立ちが阻害されるので、回らないようにすることが重要です。

7.完成と味わい
いよいよ美味しい抹茶を味わう時間が訪れました。
まず、あなたの点てた抹茶をよく見てみてください。
抹茶の濃い緑色は、春に芽吹く新緑のように鮮やかで生き生きとしています。
そして、その静かな水面は、深い森の中に広がる爽やかで落ち着いた空間を思わせます。
次に、目を閉じて抹茶の香りを楽しんでみてください。
力強い抹茶の香りは、そよぐ笹の音が心地よい竹林の風のような爽やかさを感じさせます。
最後に一口ずつ抹茶を味わいましょう。
きめ細かい泡が口当たりなめらかで、抹茶特有の苦味と甘味は自然の繊細な調和を感じさせます。

美味しい抹茶の作り方(今どきのお手軽な作り方)
昔ながらの作り方より、さらにお手軽に抹茶を楽しむ方法があります。
作り方は簡単。
広口魔法瓶水筒にふるった抹茶とお湯を入れ、蓋をします。
小刻みによく振ります。
茶せんで点てるほどのきめ細やかな泡はできませんが、この方法でも抹茶の香りや味わいを十分に楽しめます。
手軽に抹茶を楽しみたい方は、ぜひこの方法を試してみてください。
なお、夏場は冷たい水と氷を使ってこの方法で作ると、美味しい冷やし抹茶を楽しむこともできますよ。

抹茶に合うお菓子
色を楽しみ、香りを楽しみ、味まで楽しめる抹茶ですが、お菓子を組み合わせることで更にその魅力を引き立てることができます。
✅味わいの調和
抹茶の苦味や渋みと、お菓子の甘みが絶妙なバランスを生み出します。
例えば、抹茶の苦味と和菓子の上品な甘さが調和し、互いの味わいを引き立てます。
✅感覚的な楽しみ
視覚的な美しさも重要な要素です。
抹茶の鮮やかな緑色と、お菓子の色彩のコントラストを視覚的に楽しむことができます。
例えば、大福の白と抹茶の緑のコントラストは、明るい白色と落ち着いた濃緑色のように、対照的な美しさを楽しむことができます。
✅文化的な意義
抹茶とお菓子の組み合わせは、日本の伝統文化である茶道と深く結びついています。
季節の移ろいや風情を表現する和菓子と抹茶を楽しむことで、日本の風情や文化の発見につながる豊かな体験となります。
✅抹茶に合うお菓子
伝統的な金平糖や大福のような和菓子、近年ではチョコレートやマカロンのような洋菓子も抹茶に合うお菓子として知られており、和菓子でも洋菓子でも楽しめる抹茶の懐の深さには感心させられます。
伝統的な和菓子や新しい洋菓子も良いですが、私の一押しはカステラです。

カステラは、16世紀後半の安土・桃山時代に日本に伝来したお菓子で、当時の日本文化に大きな影響を与えたとされています。
当時、鶏卵を食べることがタブー視されていた日本において、卵を食品の材料として使用することは画期的で、その後の様々な和菓子のオリジナルメニューが生み出される契機となったそうです。
良い物を取り入れ、時代と共に変化を遂げる日本文化の懐の深さが生んだカステラ。
現在、カステラは日本独自の和洋折衷菓子として確立され、日常のおやつから贈答品まで幅広く親しまれています。
なかでも、福砂屋のカステラは寛永元年(1624年)の創業以来、約400年近くにわたり愛され続けており、職人の手わざによる一貫した手づくり製法で製造されています。
鶏卵、砂糖、小麦粉、水あめというシンプルな材料ながら風味豊かで奥深い味わいは、まさに職人が作る味の芸術品と言えるでしょう。
抹茶と共にいただくと、日本文化の豊かさや歴史の深みが感じられ、心が豊かに満たされる素晴らしい体験が待っています。

画像引用:福砂屋 official
野点に行こう
野点は、簡単にいうと屋外で抹茶を楽しむことを言います。
場所は公園や郊外の里山、自宅の庭でも構いません。
青空の下、風に揺れる木々の音や、鳥のさえずりを耳にしながら、抹茶の香りやお菓子を楽しんでみてください。
自然の美しさと一体になることで、日常の喧騒から解放され、心が穏やかになります。
例えば、春先には温かな日差しやほのかな梅の花の香り、初夏には力強い緑の息吹、晩秋には色鮮やかな紅葉などを楽しむことができます。
自宅の庭でも、春には名も知らない小さな花や、秋には風情のある虫の声、冬には澄んだ空気や雪景色が楽しめるかもしれません。
また、出かけた先で見つけた和菓子屋などで季節や地域のお菓子を購入してみると、あなたに素晴らしい出会いや心豊かな体験をもたらしてくれるかもしれません。
抹茶やお菓子をお供に、ただ頭を空っぽにして、ありのままの自分の心の中を感じ取ったり、五感で空気を感じることで新たな発見や感動を得ることができることでしょう。
このように、野点はただ屋外で抹茶を楽しむという行為が、自然との調和や自分自身を見つめ直すことに繋がり、豊かな感性を育む機会に繋がります。

あとがき
美味しい抹茶の作り方と感性のお話はいかがでしたか?
「簡単そうだから試してみよう」と思ってもらえたなら何よりです。
私の抹茶との出会いは、夏祭りの茶席体験会でした。
それは神社の片隅の小さな茶室で30分程度の体験でしたが、主催者の丁寧なもてなしや美味しい抹茶とお菓子、「形式より楽しむことが大事」という言葉のおかげで、リラックスした雰囲気で楽しむことができました。
帰り際に、ふと床の間に飾られた掛け軸と生け花が私の目に入りました。
その掛け軸には漢字で一文字「瀧」と書かれており、床の間の脇には青々としたススキや桔梗などが生けられていました。

何気なくそれらを眺めていた私の脳裏に浮かんだのが、力強い水飛沫と流れ落ちる水の清涼感でした。
その瞬間、単なる掛け軸と生け花に、勢いよく流れ落ちる滝と、その傍らに咲く桔梗や青々としたススキの情景が重なったのを今でも覚えています。

感性が鈍りがちな現代だからこそ、あなたも抹茶を通して想像力や繊細な心の動きを感じ取ってみてはいかがでしょうか。
その体験はきっと、あなたの豊かな感性を育んでくれるはずです。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。

コメント